第1部 わたしたちの知っているこれまでの給与
1. 給与について語るときに我々が語ってきたこと
会社にとって給与は単なる支出ではない。
透明性の高い「公正な給与」で、強いビジネスを構築できる。
労働者にとって給与はトップダウンの決定事項ではない。
決定に至る仕組みを理解し、正しい情報に基づいた鋭い議論を通じて、よりよい給与を求めるべきだ。複数のグローバル企業で給与設計を担当してきたエキスパートからの問題提起。
2.「誠意ある給与」という新しいありかた
労働者の貢献と潜在能力に対し誠意を持って支払われる給与は、会社の未来を切り拓く。
働く人の生活が安定すれば、顧客へのよい影響があり、生産性も高まって、長期的にはコスト削減にもつながる。
一括採用・終身雇用に象徴される日本型雇用が崩れつつある今、どのような考えかたが必要なのだろうか。
3.給与の歴史を振り返る
ケインズは言った。
「労働者の賃金は生産性に比例して自動的に上がり、2030年までには人々の労働時間は週15時間になるだろう」。
だがその後、能力主義メリトクラシー、株主至上主義といった考えかたが次々と提唱されるなかで、生産性と給与のリンクは失われてしまった。
今こそブラックボックスをあけるときだ。
4.企業は給与をどう考えているか
事業拡大、将来への投資、貯蓄、バランスシートの調整、株主への還元――会社が事業で得た資金の使い道は多い。
給与は直接目に見えるリターンが少ないので、競合他社の動向を横目に見ながら最後に扱う項目になりがちだ。
給与を受け取る側と支払う側の利益を一致させるために、会社側のロジックを開陳する。
5.あなたの価値はどう決まるか
あなたは自分の給与を最適にしようとし、会社は、同じ職務に就く熟練した人や未熟な人を含め、システム全体の給与を最適にしようとする。
あなたの目的をかなえるためには、まず自分がどこに位置するのかを理解することが重要だ。
現在の給与と受け取るべき給与の隔たりを埋める方法を詳しく説明しよう。
第2部 未来の給与のありかた
6.あなたが昇給を期待するなら
給与決定の仕組みを理解し、自分の待遇が充分ではないと感じたら、上司や人事にかけあう必要がある。
その際に役立つのが、プロセス(Process)、許可(Permission)、優先(Priority)、力(Power)という「4つのP」だ。
ジョブ型雇用時代に対応する具体的な交渉術。
7.格差をなくすために
「同様の仕事をしているグループ間の賃金比率は平等であるべきだ」「ある従業員とその同等者の賃金額は平等であるべきだ」――あなたはどちらに賛成するだろう。
「両方」と答えたかたは正解だ。
賃金格差とは、突き詰めれば、ある労働集団と別の労働集団の賃金の比率である。
その解消に向けた具体的な道筋を示そう。
8.給与制度は崩壊する?
テクノロジーはあらゆる人の働きかたを根本的に変化させていて、このままいけば雇用は分散化(崩壊)すると言われている。
給与もそうなるのだろうか?
フランチャイズ従業員、ギグワーカーを含む非正規雇用者、アーティストなど、これまで都合よく利用されがちだったグループに注目しながら、「公正な給与」について考えを深めたい。
終章 公正な給与の未来
すべての人に開かれた透明性の高い制度をつくることは、弱みを可視化し、それを改善できる柔軟な組織をつくるということでもある。
「公正な給与」の根底にあるのは、同じ頂点をめざす多くの道をつくるという信念だ。
より多くの給与を得るために、力を合わせて行動しよう――それが公正というものなのだから。